花嫁と咎人

「私…全部失ったの、大切なもの全部。最後の3日間は暗い牢の中で過ごしたわ。…とても冷たかった。死んでしまうと思った。…でも、そんな私を救い出してくれた人がいた。」


「……フラン。」


「その人、とても強情で意地っ張りで…でも、凄く優しいの。失った全部を埋めてくれるようで…その人といるととても楽しい。」


嗚呼、自分は何を言っているんだろう。
初対面の女の子にこんな事を言ってしまうなんて。

…でも、話せば話すほど心が軽くなる。

何故?


「でもね…最近その人と目を合わせるだけで、自分が変になってしまいそうなの。苦しくて、切なくて…でもとても幸せ。今まで普通に話せていたのに…どんどん距離を空けてしまう。」


そんな私をずっとジィンは見つめ、話を聞いてくれた。
そして暫くうんうんと頷くと、彼女は私の肩に腕を回す。


「フランってさ、今までそう言う話…他の誰かにした事ある?」


「…?いいえ、無いわ。周りに殆ど女の子はいなかったし…皆年上の人たちばかりだったから。」


確かにそうだわ。
私の胸の内をこんなに話した人は未だかつていない。

城にいる頃はエルバートにもよく相談していたけれど、その時はこんな気持ちをまだ知らなかったから…。


「そっか…まぁフランの境遇じゃ仕方ないよな…。あのなフラン。こういうの、女子話って言うんだ。」


「じょ…女子話…?」


「そ。女の子が抱える悩みを、女の子だけで話し合う事。それで共感したり…励ましたり、ストレス発散したりするんだよ。」


へへっと笑うジィンはとても可愛かった。
今を生きる女の子っていう感じ。

するとジィンは突然私の肩を掴み、私を振り向かせた。


「…どうしてフランの心が苦しくて切なくなるのか…アタシ、分かるよ。」


暫くの沈黙。
そしてちょっと首を傾げるとジィンは優しく微笑む。

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