花嫁と咎人
でも、この国に関わる重大な事かも知れないこと…。
しっかりと言わなければ。
「あのね、サミュエル…あなたを巻き込むつもりは毛頭無いの…。でも、もし何か知っているなら教えて欲しい。……そう、あのシュヴァンネンベルク公。ラザレスの事…。」
「………。」
ラザレスの名を口にした途端、サミュエルの顔から笑みが消え、瞳がギョロリと動いた。
彼は静かにティーカップを置くと私に告げる。
「シュヴァンネンベルク公ラザレス…ええ、知っておりますとも。あやつの事なら大抵は。」
「じゃあ…!」
しかし、サミュエルは大きく首を振り…静かに目を伏せた。
「じゃが、例え姫様であろうとお教えすることはできませぬ。」
「……え?」
一気に地獄に突き落とされたような感覚に襲われる。
「あやつは危険です。ワシが知っている全てを貴女様に告げたことが知られれば、ワシは愚か…姫様がどんな目に遭わされることやら知れたものではない。」
だが彼は、意地悪でそう言っているのではなくて。
…私の身を案じてサミュエルは固く口を結んでいるのだ。
それ程までに、ラザレスは危険なの?
ああ、困ったわ。
サミュエルですら、いえない事があるなんて…。
でも、どうしても聞かなければならないのに。
するとその時、エルバートが口を開いた。
「…発言させて頂いても宜しいでしょうか。」
「構わんよ、エルバート。」
そして小さく会釈をすると、彼は話し始める。