花嫁と咎人
Chapter.4
草原に咲く紫
◆ ◇ ◆
「―…っと。」
畑の一角。
慣れない手つきで農作業を手伝ってみる。
抜けたのは人参。
…今回はすぐに抜く事が出来た。
これなら、もう一本くらいはいけるだろう。
そう思って今度は大根に手をかけたが、
「う、」
力んだと同時に腹部に激しい痛みが走る。
「大丈夫か?」
赤毛の彼女に声をかけられるが、へなへなと座り込んでしまった。
嗚呼。何と情け無いのだろう。
「たかが大根も抜けないなんて…ああ。」
それから自己嫌悪に浸る。
金色の髪をくしゃっと掻きながら…彼…
…エルバートは息を吐いた。
―…遡る事数日前。
意識の戻った彼は苦悩の毎日を強いられた。
痛みで眠ることすら出来ず、動く事さえ出来ない。
何度も主を守れなかった事を後悔し…片目で何度も涙を零した。
心も痛み、体も痛む。
どうやら剣から菌が入ったらしく…刺された傷は何度も膿み…
それを拭う激痛と言ったら想像を絶するもので。
かつて主に褒められた紫眼。
だが既に右目は暗闇に閉ざされ…代わりに真一文字の傷跡だけが残った。
…そんな心も体もボロボロだった彼を献身的に支え、救ったのが…
この家に住む姉弟。
姉のコレット・キャンベルと弟のレネ・キャンベルだった。