花嫁と咎人
「羨ましい限りだべ、あんだのその金色の髪。」
遠くを見つめ、彼女は言う。
「おら達の髪は赤いし…目は黒い。…仕方ねぇっべな、親譲りだもんなぁ…。」
寂しそうに俯くコレットの横顔を見ながら…エルバートは思った。
…そういえば、どうして彼女達はこんな辺鄙な所に住んでいるのだろう。
しかも姉弟二人きりで。
両親は一体…。
するとコレットはまるで彼の心を読み取ったかのように小さく口を開いて、話し始めた。
「これでもおら達は…始めは2番街のちゃんとした家に住んでたんだべ。でもな…」
…おらがまだ10歳くらいの時だ。
突然おら達の父ちゃんと母ちゃんが病気で死んじまってな、おら達は親戚の家に預けられたんだっぺ。
そしたら今度はその親戚の人も病気で死んじまって、またおら達は遠い親戚の人の家に行った。
でも、とても幸せな日々だなんって言えなかっただ。
毎日こき使われるわ、髪を引っ張られて頭から水をぶっ掛けられるわ…。
弟のレネはまだこーんな小さいのに何度も叩かれてた。
んでな…もう、こんな生活嫌だ!って思ったら…
今度はその遠い親戚の人が病気で死んだだ。
そしたらおら達の事が一気に街中に広まって、いつしか“悪魔の子”って呼ばれるようになった。
店に物を買いに行けば閉店になってるし、歩いていたら物を投げられるなんて事もしょっちゅう。
当然身寄りも無く、貧しいおら達は学校にも行けずに…
とうとう街から追い出されちまってな。
追い出されたおら達は、ひたすら歩いただ。
今にも壊れそうな吊り橋を渡って、また歩くと“テラスパーレ”っていう町に着いた。
そんで裏路地でうずくまって座ってたらな…
「綺麗な女神様と出会ったんだ。」
コレットは3つ目のおにぎりを食べながら、ぱあっと笑顔になる。
エルバートはそんな彼女の話をひたすら聞いていた。