花嫁と咎人

するとそこには、破壊派の十字架が立てられた小さな墓があって。

見た所、まだ新しいようだ。

コレットはゆっくりと膝をつくと、残りのおにぎりを備え…小さく祈りを捧げる。


「丁度2ヶ月前くらいだ。女神様は祭壇に持たれかかる様にして…天に召されてた。自分で命を絶ってただ。側に小さな小瓶が置いてあったから、多分毒でも飲んだんだろうなぁ…。」


「………。」


「何があったかは知らねぇ。でも…きっと女神様はこうなる事を知ってたんだ。知ってたんだよ…。」


そしてコレットは立ち上がると、そそくさと帰っていってしまった。

一人残されたエルバート。
そんな彼は、墓石に何かが刻まれているのを見つけた。

砂を払い…手でなぞるように文字を読む。


「“アルベルタ、ここに眠る”……アルベルタ…?」


どうやら彼女が言っていた女神様は、アルベルタというらしい。


「どうか貴女に、安らかな眠りを」


自分も膝をつき、小さく祈る。

そして…同時にある女性の事も思い出す。


「…姫様。」


そう、それは無事なのかどうかも分からないただ一人の主の事。

…まさかもう彼女はこの世にいなくて、図々しくも自分だけが生き残ってしまったのだとしたら。
考えるだけでもう、身も心も凍りそうだ。

いち早く傷を治して、彼女に関する情報を集めなくては。


…複雑な心境のまま、彼はコレットの後を追った。



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