花嫁と咎人
「強がらなくてもいいんですよ。…私は、ちゃんとわかってますから。」
というか、見れば分かる事だが。
そんな自分を見て…ぷいっとそっぽを向いてしまうオーウェン。
「…この、女王の犬の分際で、僕に―…、」
しかし、そういいかけた時。
「おっと。」
彼の体は傾いて静かに自分の腕の中に納まってしまって。
どうやら疲れと痛みで気を失ったのだろう。
ぐったりと、眠るようにして目を閉じている。
「…お疲れ様です、オーウェン様。」
小さく唸る彼を抱え、自分は医師の元へと足を運んだ。
そして、場面が変わり…薔薇園。
「…不味い。」
赤ワインの注がれたグラスを顔から遠ざけながら…オーウェンはチッと舌打ちをした。
「そうですか?私は美味しいと思うのですが。」
そんな彼に微笑みながら、今度は自分のワイングラスにそれを注ぐ。
「お前の味覚が可笑しいんだ、エルバート。…これだから庶民は…」
綺麗な白い貴族服をまとった彼の顔に、もう痣は無く…
声は低くなり、背もかなり高くなった。
大人びた彼を見たまま…自分は微笑む。
「庶民で何が悪いんですか?…お父様に苛められてわんわん泣いていたお坊ちゃまに言われたくはありませんが。」
「…お前、まだそれを…!…あの借りはいつか絶対に返す。」