花嫁と咎人
先程不味いと言ったワインを一気飲みしながら、オーウェンは言った。
「いいですよ。要らないので返さないで下さい。」
「嫌だ、僕も要らないからお前に返す。」
「だから返さなくてもいいですから。…あ、不味いんじゃなかったんですか?ワイン。」
「お前…、絶対に殺す。」
自分の胸倉を掴もうと必死に手を伸ばしてくるオーウェンの頭を押さえ付けながら、
「近寄らないで下さいよ!オーウェン様のつけている変な香水のせいで眠たくなるんですから。」
そう言って笑う。
「…、もういい。帰る。さっさと女王陛下の所へ帰れこのクズエルバート。」
すると諦めたのか、服を調え…立ち去ってしまう彼。
「もうお帰りですか?途中で転んで怪我しないようにして下さいね。」
「うるさい!」
頬を膨らませたままズカズカと道を歩く彼は、突然振り返るとこう問いかけてきた。
「その不味いワイン。何処で買ったんだ。」
…全く、素直に美味しいといえばいいのに。
「これは―…、」
瞬間、視界がぐるんと反転し―…気がついたら自分は薔薇園の中を走っていた。
そして足を止めたのは紅い薔薇の前。
目に入ったのは…黒い髪の青年にもたれかかる様にして、意識を失っている…主の姿。