花嫁と咎人

「おっ、へーほー…。お前凄いんだな。」


すると嫌味を言われているにも関わらず、俺を褒めてくる彼は、突然声音を大きくして問いかけてきた。


「オレ、オズヴァルド・ヴァン・ウォーロック。お前なんていう名前?」


少しだけ驚いて、静かに本を閉じる。
なんだこいつと何度も思ったのに、今更何故だろう。
俺は彼を見上げると…小さく問いに答えた。


「…ハインツ。」



そして場面が一転。

今度は屋根の上に寝転がっていて。


「髪…切ったのか。」


隣には散髪を終えたオズの姿が。


「うん、別にいいだろ。もう髪を伸ばす理由も無いし、オレにはちゃんと守らなきゃならないものがあるんだし。」


幸せそうに笑う彼を見ていると、羨ましくも、微笑ましい気分になった。
そんな彼の肩を肘で小突いて、調子に乗るなよと言えば、オズはひひっと顔を歪めて俺の肩を小突き返してきた。


「いつかお前にもその長い髪とお別れする日が来るよ。」




今度は雨の降りしきる裏路地。



走ってきた俺の目に映ったのは、泣き叫ぶオズと…その腕に抱かれ息絶えた少女の姿。


「…オズ、」


「オレ、知らなかった…!なんで、なんでロナが…!そんな、」


少女の体に刺さった一本の矢、そして…散らばった沢山の硬貨。

オズは何度も首を振っては、動かない彼女を抱きしめる。


「オレが、オレがロナを…殺した…!」


俺がそんなオズに手を伸ばした時。
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