花嫁と咎人
「…っ、離せよ!」
空は晴れ…森が広がった。
「お前にオレの何が分かるんだよ…!
何度止められようがオレの意思は変わらない、オレは賊に入る、!」
オズに手を振り払われ、立ち尽くす俺。
森の奥へと立ち去るオズはとても遠くて。
「馬鹿だ…お前は本当に…」
回る視界、開く口。景色は変わり―…
「…アンタは…俺の本当の父さんじゃない…!」
パンッ。
頬を叩かれ…俺は床を見た。
赤い絨毯が敷かれた長い廊下。
遠ざかる足音、憎しみの渦。
すると別の足音が聞こえ…俺は顔を上げる。
「…ハインツ。」
赤い目に銀色の髪。
男のような格好をしたその女性は、
「姉さん…。」
「また…叩かれたのか。」
俺の赤く腫れた頬をそっと触った。
「…あの人は、誰も愛してはいないんだ。お前も…勿論この私も。母を道具としか見ていなかった人に…愛は決して理解できない。」
そして俺は小さく口を開く。
「俺が偽者で…姉さんが本物なら良かったんだ。…そうしたら、姉さんは母さんとずっと一緒にいることが出来たし、それに…」