花嫁と咎人
一呼吸。
「俺が生まれる事も無かった。」
刹那強く抱き締められた。
「馬鹿を言うな…!お前の瞳はお前のものだ。たまたま私は違った…ただ、それだけの事。」
優しい手。
「ハインツ、お前に罪は無い。」
さらに景色がうねって…
場所は綺麗な大理石の部屋。
椅子に座る義父が大口を開けて笑った。
「…20歳までに母か母にまつわる証拠を捜すと?一体お前が何を言っているのか…私にはよく分からない。」
「俺は本気です。」
立ったまま…俺は憎い父の顔を見る。
「そんなもの…見つかるわけが無いだろう。この私ですらもう知らないのに…お前がたった5年で世界中を周り見つける事が出来るとは、到底思えない。」
ひたすら笑い続ける父。
「…もし、5年で見つける事が出来なければ…俺は一生、貴方の言いなりになる事を誓います。俺は一切反抗しない。貴方は俺を人形のように扱えばいい。」
すると突然笑いをやめる彼。
そんな父はこんな事を言い出した。
「…ほう、その案は中々いいものだが…。もしここで私が良いと言って、5年後、お前が帰ってこなかった場合どうする。5年も先の約束を、すぐに信用出来ると思うか?」
暫くの沈黙。
すると、突然姉が部屋に入ってきた。
そして、
「私が…ハインツの代わりにここに残ります。そしてもし5年後の今日…ハインツが帰ってこなければ、どうぞ私を殺してください。…偽者の私なら、死んでも差し支えないでしょう?」