花嫁と咎人
魔女が来た町
朝、起きた俺達は…次にすぐ東にある町“ブランタン”を目指した。
「ハイネ、目が開かないわ…」
そう言うフランの目は昨日泣いたせいかパンパンに腫れ上がっていて、オズに「オバケ!」と叫ばれてしまう始末。
「でもオバケだなんて酷い…私だって好きでこんな顔してる訳じゃないのよ。」
だなんてぶつぶつフランは言う。
というか彼女がここまでぶつぶつ言うなんて珍しい。
顔の事を言われるのがそんなに嫌だったのだろうか。
そんな事を話している内に、すぐに“ブランタン”に着いた。
3番街に比べたらやはり身なりはいいものではないが…どうやらこの町にはまだ緋色の死神の影響は出ていないらしい。
町は普通に人が歩きまわっていた。
「はぐれんなよ。」
お馴染みの台詞でそう言った時、ふと裏路地に目が向く。
今、何かと目が合ったような気が―…。
そして立ち止まり、よく目を凝らすと、
「……、!」
そこには何人かの人が積み重なって死んでいて。
目が合ったのは、殆どミイラと化した死体。
オズはフランの目を隠し、うげぇと声を漏らした。
「…あーこりゃ、『例の水』を飲まなかった連中さ。気の毒にな…。病が病だから土葬するわけにはいかねぇから、今日中に火葬してやんねぇとな。」
すると不意に後ろから声が飛んできて、慌てて振り返る。
そこにはチェック柄の服を着た、少し太めの中年男性が立っていて。
「…『例の水』?」
俺がそう言うと、「なんだあんた等、他所モンか」と口元を歪める男。
「『例の水』ってのは魔女が作った水なんだよ。」