花嫁と咎人
……魔女が、作った水…?
「何でもこの町のもっと南東にある大草原に、小さな赤い屋根の家と…破壊派の教会があってよ。…そこに住む美人の魔女が、何週間に一度、両手で抱えるくらいの水を持ってきてたんだよ。」
そんな男は、ガハガハと臭い息をばらまきながらひたすら話す。
「その魔女、美人なのはいいが、いつも髪の毛を布で隠しちまっててよ、まるでシスターみたいだったぜ。」
―…髪を隠している?
刹那、フランが俺の方を向いて来たのが分かった。
俺は息を呑み、その男に問いかける。
「…なぁ、その魔女って言うのは目が青かったか?」
「んあ?…あ、あー…どうだったか…、ずっと前の事だから忘れちまったよ。」
そして再びガハハハと笑い始めた。
……うっぜぇ。
「ま、良かったらおれの家に来いよ。今ならかみさんもいねぇし、これでも一応この町の保安官だからよぉ。」
それから何故か中年の男に襟を掴まれ、後ろ向きに引きずられる俺達。
なんだこの展開は。
訳の分からないまま暫く引きずられ、木製の家に着いた。
屋根の上の大きな看板には、
『保安官・ジャック・カーンの家』
とデカデカと書かれていて。
途端に俺達はこの人の名前がジャック・カーンなのだと分かった。
「なんだ譲ちゃん。目ぇ腫れてんじゃねぇか!男にでもフラれたか、ガハハハ!」
中に入るなり、ジャックはフランの顔を見て何かを手渡す。
「これでも塗っとけ!腫れが引くぞ。」