花嫁と咎人

―全く。
この酔い潰れ姫様が…。

そう小さく溜め息を吐きながら、彼女を優しく抱きかかえ…ベッドのある空き部屋へと連れて行く。

前もって空き部屋とシャワー室を使ってもいいという許可を貰っているから、何処で寝ようとかの心配は要らないが…。

フランをそっとベッドに寝かせ、


「良い夢を。」


体の向きを変えた時。
不意に手を引かれ、俺はバランスを崩してベッドに倒れこんでしまった。

幸い、フランの上へダイブという最悪の状況は免れたが…


「…、!」


目を開けると、下にはフランの顔があって。
潤んだエメラルド色の瞳が、俺を見ている。


「………。」


暫くの沈黙の後…そっとフランの両手が俺の頬を包み、薄い唇が開いた。


「………好きよ。」


…嗚呼、きっとまだ酔っているせいだ。
こんなにもフランがおかしな事を言うなんて。

でも、どうしてかその視線を逸らす事が出来ない。


気がついたら顔は徐々に近づき、優しく口付けを落としてしまって。
そして優しく彼女の髪を撫でると小さく微笑を浮かべた。


「………。」


どうしてだろう。
こんなにも心は酷く悲しんでいるのに、
彼女の事がとても愛おしいと思う。


ああ、そうか。
きっと俺は罪深い咎人なんだ。


だから、こんなにも頭の中がぼんやりとしてしまうのだ。


でも、それ以上に俺がおかしくなっているのは、


俺がフランに酔っているせいなのかもしれない。




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