花嫁と咎人

  ◆ ◇ ◆

早朝、目覚めると…なにやら姉弟が荷車にせっせと何かを積んでいた。


「あの…一体何をしていらっしゃるんですか?」


目を擦りながら、エルバートは首を傾げる。
すると姉コレットが「ああ、起きたのか王子様」と言って、ふうと額の汗を手の甲で拭った。


「これは隣町のブランタンに届ける“聖水”だっぺ。」


そう指差す先には荷車に積み終わったばかりの水瓶が3つ程あって。
中にはどうやら水が入っているようだ。


「…“聖水”ですか?」


といわれたものの、にわかに信じがたい話で。


「ああ、これさ飲むと、どんな病もイチコロだっぺな。…女神様が作った水だからな。」


だなんてコレットは言うけれど…これの何処が聖水…。
女神様…たしか、アルベルタとかいう女性だったか。
その女性が作ったにしろ、そんな神々しい名前をつけるほどの物なのだろうか。


「んで、どうするだ王子様。」


「え?何がですか?」


突然話を振られ、素っ頓狂な声を上げてしまう彼。


「今からブランタンに行くから…来るのか、来ねぇのかって話だべ。」


ま、怪我人は家にいるのが一番だっぺなと言いながら、コレットは弟のレネと一緒に荷車を引き出した。


「あ、え…ちょっと待って下さい!そのブランタンはここからどのくらいの距離にあるんですか?」


慌てるエルバート。


「あ?そうだな、まあ昼前には着くんじゃねぇか?」


…昼前って…。

今まだ朝の5時ですけど…!
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