花嫁と咎人

どうする事も出来ずに立ちすくんでいると、突然扉が開いて…


「…っきゃ。」


ぐいっと体ごと引っ張られる。

不適な笑みを浮かべて私の頭上へ視線を移すオズと、背中に感じる誰かの体温。
見上げるとそこにはウィッグを被ったハイネの姿があって。


「…俺の女に手ぇ出すんじゃねぇよ。」


凛とした声で、彼はそう言い放った。


「けち。」


対してオズは口を尖らせる。


私は一人、ぽかーんとしてその状況を見ていた。


もしかして私、弄ばれてるのかしら。

なんて思いながら。


――――…。


それから一階に降りていくと、なにやらジャックとリサが一枚の紙を見て話していた。


「何を見ているの?」


私がそう言うと、ジャックは「ん?ああ、これだよ」と言って私に紙を見せてきて。

途端に息を呑む。

そう、それは“私達を捜すために国が発布したもの”。
顔に出やすい私は、平然を装いながら…紙をハイネに渡した。


「死刑囚が姫様誘拐して逃げてんだってな。まあ…おれはあんまりそう言うの興味ねぇからアレなんだけどよ…、世の中物騒になったもんだなってつくづく思うね。」


「………。」


無言のハイネ。何もいえない私とオズ。


「…そういえばあんた達、旅はいいけど…一体何しに旅をしてるんだい?」


リサがそう言った時、ハイネがサーベルに手をかけるのが分かった。
オズは私の手を引き…出来るだけ自分の近くに寄せる。


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