花嫁と咎人

緊迫する空気。

しかし、それ破ったのはハイネが作ったでまかせの証言だった。


「俺達は元々は5番街に住んでいた幼馴染。だけどそれぞれ家が貧しくて…やむ終えず俺達は2番街の商家に丁稚奉公に行った。」


…丁稚奉公…。


「俺とレオはまあ、こき使われたけど…一応別々の商家に。でもフィーは…。」



途端、とても悲しそうな表情で私の方を振り返る。
そして口パクで『話に合わせろ!』と言うと再びジャックとリサの方へ向き直って。


「家族には申し訳ないこの上ないが、もう俺達には逃げてくる他術が無くて。…今、それぞれ実家に戻る最中なんだ。」


私がフィーで、オズがレオ。

それはともかく。

『ハイネは口上手だけど、ネーミングセンスはゼロ。』

きっとオズもそう思っているに違いない。

…彼はあろう事か、俯いてすすり泣くフリをして…笑っていた。
浮かべた涙は、きっと笑い泣きのせいだろう。


「…っ、そうなんすよ…フィーはとってもいい子なのに無理やり…!」


そしてそのままフォローに入る。

…笑いを通り越すと本当に悲しくなるのね…。
涙を拭うような仕草をしながら、オズの言動に私は小さく溜め息を吐いた。

だが、私達の演技が幸を招いたのか…


「おお…そうか、辛い事を話させちまったなぁ…」


とジャックは謝りながら頭を掻いて。

リサは辛かったねぇと私に近寄って頭を撫でてくれた。


……嗚呼、善意を踏みにじるような事をしてごめんなさい…!


違う意味で本当に涙が出そうでした。



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