花嫁と咎人

「会えて、よかった…、」


震える唇、震える手に…高鳴る心。


「…お馬鹿さんね、エルバート…。そんなの…我侭の内に入らないわ。」


死したはずの騎士、死ぬ運命であった私は…互いに生きたまま再会出来たことを、只無言で喜び合った。

沢山聞きたいことはある。
でも、そんな事は二の次で。


「…お帰りなさい、エルバート。」


「ご無事で何よりです…姫様。」


これは愛。
でも恋人のような愛ではない。
それよりもっと深く、シンプルなもの。

互いを想い、幸せを願う。
そう…それは家族。

全て失ったはずの…私の家族。


「…右目が…。」


でも、それなりに失った物も大きかった。
エルバートの右目は完全に潰れ、見えぬまま。

その紫の両目が同時に開く事は二度とない。

それに、負った傷は深く…まだ完治していない上に、服から垣間見える体の至る所には痛々しい傷跡が残っていた。


「私の事などどうでも良いのです、それより問題は姫様、貴女様の方です。」


しかし、エルバートは私を見据えて。


「死刑囚に誘拐されたとの紙を拝見致しました。一体、その輩は何処に……」


そう言った時、私達の背後でザッと地面が鳴った。


「へぇ…。アンタが、エルバートって奴か。」


見上げた先にはハイネの姿。
途端に焦る私。

いけない…!
エルバートはハイネの事をまだ知らないわ…!




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