花嫁と咎人
するとその時、突然ハイネが私を強引に引っ張った。
そしてあろう事か、
「…、んっ…!」
そのまま口付けをされて。
と同時にエルバートの驚く表情も見えた。
いや、驚いているのか違うのか…とりあえずとんでもない物を見たといったような顔。
暫くして口を離すと、ハイネは不適な笑みを浮かべながらエルバートを見た。
「これで分かっただろ、堅物。」
そしてトドメの一言。
私は完全に呆気に取られて、硬直してしまって。
エルバートとハイネ、どちらを見ていいのかも分からない。
只、どんどんと顔が熱くなるばかりで。
考えていた事全てが…全部飛んでいってしまったみたい。
だが、その時。
無言だったエルバートがようやく口を開く。
「…成程。」
でも…その瞳はとても冷ややかで。
「貴方が姫様をたぶらかしたと言う事が、よく分かりました。」
こんなエルバートは、初めて見た。
怒っているのかどうなのか分からない。
けれど、信じていないのは誰がどう見ても分かった。
対して、一層不機嫌そうな顔をするハイネ。
「ち、違うわエルバート、ハイネは本当に…」
「やはり、交えてみないと分かりません。」
私の言葉をも遮り、彼はこちらに歩み寄って来た。
そして私を通り過ぎ、ハイネの横を通り過ぎる―…
と思ったその刹那。