花嫁と咎人
「…ああ、あの事件の事ですか。」
もう5年も経つんですねーと何度も頷く。
「で、帰ってきそうなんですか?」
しかし、女性は唸るばかり。
「それがなんともねぇ。よりによってあの国に行っちゃったせいで出れるかどうか…。」
「あの国って?」
「…エスタンシアよ。」
「ああ、あの鎖国中の。」
そして同時に下に貼られた白黒写真に目を移す。
…そこには薄着をまとった短い銀色の髪を持つ女性の姿があった。
「悲惨ですよねー。帰ってこなかったら代わりに自分が死ななくちゃいけないなんて。」
その写真を見て、顎に手を沿える男。
「それに、ここ三ヶ月…ずっと監禁生活だなんて、おれもう死にそうですよ。」
ぶるぶる震えて男は「おー怖い」と記事から目を離した。
「まあ、どう足掻いてもあと26日。…私達に報道の自由が与えられるのも、そこで決まるってワケね。」
女性はカメラを手に、席を立つ。
「ウィリー!」
そして男を呼ぶなり、
「はい、編集長なんでしょう?」
「車。」
そう言って。