花嫁と咎人
凍てつく両手
―…姉弟の家についた頃には、もう日暮れ。
真っ赤な太陽が地平線に沈んでいく時だった。
「まあゆっくりしてけ。」
姉、コレットにお茶を入れてもらい一休み。
一応彼等には、エルバートの友人として話は通しておいた。
眠たそうに大きな欠伸をするオズと、日記を読んではせっせと想いの丈を綴るフラン。
エルバートはその横で地図に目を通し…。
俺は小さく息を吐く。
「まあ、見ての通り何にもねぇけど…何か食いたい物あっべか。」
すると姉のコレットが、激しい訛りをかましながらそう言って。
その途端に、
「シチュー!」
待ってました!といわんばかりに即答するオズの目はキラキラ輝いている。
…一体何処まで図々しい奴なんだ。
俺は再度ため息を吐きながら頬杖を吐いた。
「…んーシチューか。まあ、出来なくもないべな。」
コレットはそう言って弟のレネを畑へ行くよう指示する。
「私も手伝いますよ。」
そんな彼の後を追うエルバートだが、
「いや、俺が行く。怪我人は引っ込んでろ。」
彼の肩を掴み、俺がレネと共に畑へと向かった。
俺の行動に一同は大層驚いた顔をしていたが、そんな事はどうでもいい。
俺には…ここでやらなければならないことがあった。
その為なら畑仕事なんざ朝飯前。
何だってやってやる覚悟だ。