花嫁と咎人

土を掘る音だけが聞こえる。

―…必死に、彼は掘った。

無言で、只黙々と。


それを見ている私とオズ。
教会の中で待っているエルバートと姉弟。

妙な沈黙が、場の空気を一気に沈めた。


ザッ、ザッ。


死したものを掘り起こすことが、どんなに苦痛か。

ハイネはそれでも涙一つ流さないで…ひたすら手を動かす。


墓石に刻まれた“アルベルタ”という名前。
それを見たときも、彼の表情は変わらなかった。

まるで覚悟しているかのような顔つき。

私には真似できない強さ。


―そして15分くらい掘り続けただろうか。


シャベルの先端が何かにぶつかり、ガツンと音を立てた。


「…あ、」


黒い表面の物体。
…それは紛れも無く棺、そのもので。

表面の土を払えば、ランプの光によって十字架の装飾が綺麗に映し出される。


ハイネを見る、オズと私。


只そのままの体勢で…立ち尽くすハイネ。


そして数分して意を決したのか…彼は棺の蓋に手をかけ―…


「……、」


こじ開けた。




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