花嫁と咎人

―――…

ハインツ、元気ですか?

これをあなたが目にする時、私は既に空の上にいる事でしょう。


2番街の酒屋、そこにいる女店主さん。
その方の好意でいつも国外の新聞を読んでいました。
だから、あなたが今どうしているのか…母はちゃんと知っています。


それにしても、お馬鹿なことをしでかしましたねハインツ。
自分の人生をかけて私を見つけ出そうなんて、無謀としかいいようがありません。


―でも、その事を知ったとき、私はとても嬉しかった。

あなたが私を覚えていてくれている。
ルエラがあなたを守ってくれている。

残酷な環境の中でも、確かにあった愛を…母はとても嬉しく思いました。

しかし、それと同時に私はとても悲しかった。

もしあなたが私を見つけ出してくれなかったら、ルエラが死に、あなたは人形に。

もし私を見つけ出して帰ったとしても、あの男の事です。


…きっと私を上手い事利用して、またあなた達を苦しめるでしょう。


それは母の本望ではありません。
故に、それ以外の方法を見つけなければならない。


…つまりそれは私の死。
私しか持ちえない遺品を胸に、棺で眠ること。


でも、勘違いしないで下さい。
私は私の意志で、命を絶つのです。

決して…あなたのせいではありません。

残酷な運命の連鎖を止めるには…この方法で終止符を打つしか他に手が無い事を…




頭の良いあなたなら、きっと分かってくれるでしょう。







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