花嫁と咎人

「…いつから俺に向かって馬鹿って言えるようになったんだ。」


からかうようなハイネの言葉。
それでも私は、


「…あなたに何度も言われたからよ。」


泣く事を止めなかった。



  ◆ ◇ ◆


それから暫くして…姉弟の家に帰った私達。
そんな私達を迎えたのは…


「さあ、食え!」


巨大な鍋の中に入った、てんこ盛りのシチューで。

いい匂いと、沢山の湯気を立てながら…机のど真ん中で存在感を出しまくるそのシチュー。


「…これ、どうしたの…?」


それを見て驚く私と、


「……ひっ、」


声も出ないハイネ。

そんな私達に構う事無く、コレットは大きなお玉でぐりぐりとそのシチューをかき混ぜながら口を開いた。


「あの茶髪の兄ちゃんがシチュー食いたいって言ってたから作ったべさ。…って、あれ?兄ちゃんいないべ。」


だが、その視線の先に勿論オズの姿は無く。


「…あ、オズは先に国に戻ってしまったの。」


私がそう言うと「ちぇ。」と彼女は渋い顔をして…


「せっかく作ったのに…」


と愚痴を零した。



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