花嫁と咎人

「まぁでも、残りの皆さんで美味しく頂きましょう。…ね?」


するとひょこんと巨大な鍋の影から顔を出すエルバートと


「だべさ!」


弟、レネの姿が現れて。

…そんな彼の頭には、ハイネが被っていたウイッグの姿も…。


「あ!てめ、それ…!」


それを見た瞬間、ハイネが叫び奪い返そうと手を伸ばした。


「うわぁあ!」


勿論反射的にハイネの手から逃げるレネ。


「か、返せよ…!」


追いかけては、追いかけられて。
鍋の周りを駆け回っては、ぴょんぴょん宙を飛ぶハイネのウィッグ。



「もう、危ないから止めて下さい!」


その時、止めようとエルバートが出した手が、ウィッグを持つレネの手に当たって。


「あ。」


高く舞い上がったウィッグは見事に、



―…ふわさっ。



「―……う、そ。」


シチューが入った鍋の中へ…



ダイブした。


< 289 / 530 >

この作品をシェア

pagetop