花嫁と咎人

「だぁぁあああっぁぁぁあ!!」


頭を抱えて叫ぶハイネと


「おらのシチューがあぁぁああぁ!」


物凄い形相で叫ぶコレット。


「ど、どうしてくれんだよ…!このクソガキ…!」


ハイネは黙りこくるレネの首を掴んではぶんぶん揺さぶって…


「これに俺の命がかかってたんだぞ、お前どう責任取るつもりだああ!?」


「…ご、ご…ぶぇ…ん、なざ…」


レネが白目を剥きそうになった時、


「これ以上は、だ、駄目よハイネ!」


私が制止に入った。


対してお玉を掲げて怒ったコレットは「むぎゃぁ!」と叫びながら、


「王子様のばがあ!」


それをまるでこん棒のように水平に凪ぐ。

綺麗な弧を描いたお玉は見事、


「ぶッ!」


エルバートの左頬を直撃。

勿論地味にシチューも飛び散って、もはや王子様とは言い難い姿になってしまった。


―…なにがなんだか分からない内に、惨状になってしまったこの場所。
すると、ハイネが突然…笑いながら言った。


「ひ、ひひひっ、なんだよアンタ…その面じゃ舞踏会にも行けねぇな!」


勿論その視線の先にいたのはシチューまみれのエルバートの姿。

恐らく彼はまだエルバートに対して好意を持っていないのだろう。

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