花嫁と咎人

そんな二人を止めに行く私だけども。


「ご安心下さい姫様。これは“喧嘩”ではなく、“呼び出し”ですから。」


逆に諭されてしまって。

た、確かに「表へ出ろ」は喧嘩ではないけど…!
重要なのはその後の事よ!


だなんて思う私を置いてけぼりにして、二人はシチューまみれのまま外に出て行ってしまった。


「…まあ、姉ちゃん。…ヅラ入っだけどよ、食え…シチュー。」


ドアを見つめる私にコレットが寂しそうな顔でお皿にシチューを注いで。

その好意を裏切る事もできず、私は椅子に座ってそのシチューを見た。


―…うわあ、髪の毛が一本入ってるわ。


でもそんな事言えずに、


「あ、ありがとう。」


一口。

外からとても凄い音がしたけど、私はそのシチューの美味しさに浸ってしまっていた。



  ◆ ◇ ◆


剣で斬りあっているかのような妙な金属音や、壁の外壁が壊れたんじゃないかと思うような爆音が収まった後。

突然ドアが開き、


「……あ、…え?」


今度は泥まみれの二人が帰ってきた。
そして何が起こったのか、肩を組み…笑いあうハイネとエルバート。

先程の険悪な雰囲気など微塵も残さず、まるでそれが嘘のように…
笑っては、肩を叩きあい…


「男の友情だべな。」


を醸し出している。
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