花嫁と咎人

  ◆ ◇ ◆



―…刹那、体が硬直した。

割れた窓ガラスを見たまま、私は只立ちすくんで。


妙な違和感が右の腹部から脳まで広がった。

手に当たる異物。
真っ赤に染まる己の手のひら。


「…、あ…」


目線を下げた時に見えた…腹部に刺さった何か。

それを理解する間も無く、私は膝を付いた。

痛みより、苦しみより先に、何か分からない物が私を襲って…
ふと気がついたら視界が反転していた。


痛みさえ分からない。
揺れる視界、震える唇。


途端にコレットが悲鳴を上げた。


一体、何が起こったのか分からなくて。
体が思うように動いてくれなくて。


その時、良く知る人が…私の視界に入った。
銀色の髪。

見開かれた青い瞳。





嗚呼、どうしてそんな顔をしているの―…





そう思った時、意識は朦朧として…言う事を聞いてくれなくなってしまった。


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