花嫁と咎人

アヤツリ人形


  ◇ ◆ ◇

場所はエスタンシア王国・エステリア城。

ラザレスの前に跪く、一人の王国騎士団。
彼は随時経過を報告する係の者で、丁度今内容を報告し終えた所だった。


「―…で、女王を取り逃がしたと?」


目の前の王国騎士団をギロリ睨んだ後、ラザレスは大きくため息を吐く。


「一体あの馬鹿息子は何をやっているんだ…!」


彼は大層呆れたように額に手をつき、目の前にあった書類の山をなぎ倒した。

…バラバラと床に散らばる紙。


女王が脱走して既に一ヶ月くらいになる。
それなのに王族の証は愚か、女王と死刑囚のどちらも捕らえられぬとは。

一体、どうしたものか。


「…ですが、ラザレス様。」


すると王国騎士団は思いがけない事を言った。


「その過程で…とある人物を捕らえました。」


…とある人物だと?


「…誰だそれは。ここに連れて来い。」


「…承知。」


思わず首を傾げる。
私の知り合いか?

いや、知り合いなどもはや何処にもいない。
全て排除したはずだ。

そんな事を考えている内に、扉は開き…
両手を縛られたままの男が部屋に入ってきて。

その姿を見るなり…ラザレスは思わず自分の目を疑った。


「…なんで、貴様が生きている…!?」


金髪に、紫色の瞳。
格好は以前と全く違うが…

その人物で間違いなくて。


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