花嫁と咎人

私だけの騎士、エルバート・ローゼンハイン。

そして、孤独な私のたった一人の家族。

傷を負い、それでも剣を振う彼の姿を直視できず、顔を覆った両手。

しかし彼を信じる決意に反し、指の隙間から覗かせた瞳が写したのは、


流れる赤い色。


「嫌、」


貫き抉られる様な音と、手から落ちる剣の音。
乾いた呻き、最後に聞こえた呼吸。

それらが重なり…騎士が倒れた時。

私のドレスは、心は、赤黒き痛みに染められた。


「嫌よ…エルバート…。」


染まる、染まる…緑色のドレス。
赤き染料は彼の金髪をも染め上げて。


私の心にはきっと、大きくて永遠に閉じない穴が開いた。



「あ…あ…、そんな、嘘…」


誇りは、想いは…薔薇のように散り…

横たわる私の騎士はもう、動かない。

最後に触れる事も許されず、抱きしめあう事も許されず…


「エル…バート、…!」


地下に響き渡ったのは私の声。

騎士を失くした姫の嘆き。



「…死体は下水にでも流しておけ。その内鼠が跡形も無く掃除してくれるだろう。」

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