花嫁と咎人

それを聞いたエルバートも思わず額に手を当て、大きく息を吐きながら「なんて事を」と言っては何度もうな垂れる。


「あと、ここは一日一食。銀のお椀に一杯だけだ。多分そのせいで痩せたんだよ。」


と彼女は言った。


「―…で。今、フラン達はどうしてるんだい。…ハインツを知ってるなら、どこかで会ったんだろう?」


そして突き刺さるタリアの視線。

エルバートはそんな彼女の視線から目を逸らし…小さく唸る。


「5番街に逃げたみたいです。…でも、どうやら姫様が深手を負っているようで…」


そう、ここに来るまでにコレットから聞いた事。


『美人の姉ちゃんの腹に短剣が刺さってた。』


それは…驚愕の出来事だった。
そして今ハインツ君が姫様を抱えて5番街に行っているそうなのだが…。


「このままだと、姫様は死んでしまうかもしれない…!」


自然と力のこもる声。

出来るならば、


「ここを抜け出して…助けに行こうかと思っています。」


そう、タリアに言った時。


「―…止めときな。」


思いがけず飛び出したのは、否定的な言葉で。


「…な、何故ですか…!今こうしている内にももしかしたら姫様は…!」


すると彼女はそう叫ぶエルバートの口を押さえつけ、


「…声が大きいよ!」


押し殺した声で言った。



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