花嫁と咎人
「今ここを抜け出したとして、お前に一体何が出来るんだい!」
彼を襲う、独特の気迫。
「どうせ後でもつけられて、全員が捕まって処刑台に送られるだけだよ!このアホたれが!」
―…バシッ。
物凄い勢いで後頭部を叩かれて、エルバートは鉄柵に額をぶつけてしまう。
ゴーンと鈍い音が地下に広がり、憲兵が慌てて見に来たが…
「…すみません、なんでもないです…。」
額を押さえて悶絶するエルバートを見て、
「紛らわしい事をするな!」
と一喝して、足早に去って行った。
そんな憲兵を見送り、ようやく辺りが静かになった時、
「い、痛いじゃないですか…!」
真っ赤になった額を押さえて彼は叫んだ。
そんな彼を見て「悪いね」と言う割には全く悪気の無さそうなタリア。
彼女は暫く笑った後、大きく息を吐き…再び煙管に口をつけた。
「…ここでおとなしくしてればいいのさ。…後は、あのハインツが何とかしてくれるよ。」
「…は?」
「どうせあと24日の事だ。…何とかなる。」
そして、彼女の口から零れ出したのは意味の分からない事ばかりで。
首を傾げるエルバートを見ては、タリアはさも面白げに言う。
「お前が知らなくても、ちゃんと道筋は通ってるのさ。」
道、筋?
「永遠の守りはいつか破壊を招く。望もうとも、望まざろうとも…摂理は、同じ事を繰り返している。」
吐き出される煙。
するとタリアは突然エルバートに煙管と突きつけ沢山の仮定を並べ始めた。