花嫁と咎人
◇ ◆ ◇
オーウェンは、僅かばかりの王国騎士団を外で待たせ…
一人…墓石の前で立ちすくんでいた。
「もう暫く、僕を許して下さい。」
どうやら自分が来る前に、誰かが掘り返したらしい。
湿った土が乾きっていないまま、そこに被せてあって。
彼は何度も新聞で目にした名前を呼んだ。
「…アリシア…いえ、アルベルタさん。」
そしてその手には、彼女の写真が載った…新聞紙の紙切れが。
「今、この国を救えるのは…彼しかいないのです。」
ぎゅっと握りしめる拳。
…やりきれない想いが、ただただ…彼の心を突き刺した。
「―…貴女は、母に良く似ていた。」
どうして、こんな事になってしまったのか。
運命とは残酷だ。
サヨナラさえも…言わせてくれないなんて。
「もう少し早く、貴女だと…気づいていればよかったのに…!」
目から零れた一雫。
嗚呼、全ては盲目が故に。
結末を知らないが故に。
繋がった糸でさえ、
その時は気がつかないのだ。