花嫁と咎人
忍び寄る病魔
異変に気がついたのは、5番街に入ってすぐの事だった。
「―っ、げほっ、げほっ」
むせ返るような咳。
それは俺ではなく、フランの方で。
俺は慌てて馬を止め、彼女を覗き込んだ。
―…刺さった短剣ごと巻いた包帯。
包帯は真っ赤に染め上げられ、見るからに痛々しげだが…
幸い、殆ど出血はおさまり
不謹慎にも俺は少し安心していた。
とは言っても失血状態には変わりないし、このままだと傷口から感染症を引き起こす可能性もある。
どう考えても一刻を争う状況なのだが―…
「……、げほっ。」
明らかにおかしな咳かたをするフランの額を触って、おおよその熱を測った。
―…熱い。
どうやら熱があるらしい。
怪我によるものなのか、それとも他か。
分からないが…ひとまず近くの木陰にフランを下ろし俺は再度フランを見る。
咳をする度に歪む表情。
刺さっている部分が傷むのだろう。
…ヤバイ。
俺はふいに焦りを感じた。
このまま咳が続けば傷口が広がってまた出血し始めるかもしれない。
早く何処かへ行かないと…!
もう一度彼女を毛布にくるみ、抱き上げようとしたその時。
「―…た、い」
フランの唇が、弱弱しく開いて。