花嫁と咎人

  ◆ ◇ ◆


その頃…小さな木製の船が一隻、大海原に浮かんでいた。

「ヒイッ」と小さく声を上げながら舵を取る中年の男と、その側に立つ茶髪の青年。

そしてその青年は男の頭に銃を突きつけていた。


「これ、見た事無いかもしれないけどさ…一応人殺せちゃうんだよねぇ。オレ、弓の方が好きなんだけど…今は文明の力に頼っちゃった方が手っ取り早いし、ね。」


などと脅しながら、彼…オズヴァルド・ヴァン・ウォーロックはニコリと笑って。


「鎖国だのなんなのって、この国もおかしいよ。」


次に彼は小型の無線機を取り出すが…


「ん?あれ、動かないな…。潮風でやられちゃったのかも。」


そう言ってはそれを海に放り投げてしまった。


「まあでも…大丈夫かな。」


すると今度は器用に紙を取り出して、そこにさらさらと文字を書いていく。
書き終わるとそれを丸め…おもむろに首から下げてあった小型のティンホイッスルを取り出すと、


「おいで。」


思い切りそれを吹いた。

ピィィィイィィと高い音を立てて、大海原へと響き渡る綺麗な音。
暫くすると遠くから何かが羽ばたいて来るのが見えた。


「…来た来た。」


そう、それは大きな鷲。
茶と白の長い尾を持つ立派な鷲だった。

そんな鷲はオズの姿を捉えると急接近してきて。

彼は腕に何回も布を巻きつけて…そこにその鷲を止まらせた。

刹那、目をぱちくりさせながら独特な泣き声を上げる鷲。


「ごめんな、お前の主じゃなくて。」


鷲の頭を撫でながら…オズは優しく言う。



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