花嫁と咎人
打ち砕く剣と
――…暗い。
嗚呼、とても暗くて…気持ちの悪い場所だ。
ピチャン。
ピチャン。
歩く度に足元で聞こえる水の音。
鼻につくような鉄の臭い。
―嗚呼、暗い。
暗くて、何も見えない。
「――…、」
すると、何かが足に当たった。
思わずしゃがみ込むと―…
突然何かに手を掴まれて。
『―…どうして…助けてくれなかったの…』
目の前にいたのは、腐りかけた…母の姿。
「……!」
『嗚呼…苦しい、悲しい…お前が早く私を見つけてくれさえすれば…』
母の恐ろしい顔、首に伸びる細い手。
真っ赤な口が大きく開いて、
『私は死なずに済んだのに…!』
刹那、俺はその手を振り切り走り出した。
右を向けば手と足首に鎖を巻いて、真っ赤な血を流したままこちらを見る…姉の姿。
『ハインツ…どうしてくれるんだ。お前が来てくれなかったから私は…』
ゴロンと音を立てて、彼女の首がずり落ちて。
『首が何処かへ行ってしまったよ。』
「―…、っ…!」