花嫁と咎人
「とりあえず安静にしてくださらないと困ります。…せっかくの賞金首の貴方が死んだとなれば、僕がここの賊頭に殺されますので。」
続けてずり落ちた眼鏡を直しながら…彼は言う。
「それに…貴方としても駄目でしょう。お姉様を見殺しにするつもりですか?」
彼は俺の腕に点滴を付け直し、ニコリと微笑んだ。
―こいつ、何処の国の奴だ?
姉さんの事を知っている以上、エスタンシアの者ではないようだ。
俺が不審な目で見ていると、
「…そんな目で見ないで下さいよ。ちゃんと自己紹介しますから。」
と言って俺に向き直るブロッコリー。
そして彼は深々と頭を下げて、口を開いた。
「僕はイゼリオ公国から参りました、アキ・アルミラと申します。職業は医師。先月辺りにイスラ島行きの船が座礁して…賊に捕まっちゃいました。」
……ん?イスラ島行き?
「イスラだって?…それ、俺も乗ってたぜ。」
すると彼、アキは万遍の笑顔を浮かべて、
「そりゃそうですよ。貴方と同じ船に乗ってたんですもん。船に乗ってる時もずっと貴方を目で追いかけてましたから。」
さらりと言う。
ちょ、怖っ!
なんだよ、ストーカーかよ!
「それじゃあ一緒にこの国に漂着したって訳か?」
「ええ、まあ。場所はかなり違ったみたいですけど、そう言う事になりますね。」
はっはっは!と笑いながら話すアキ。
それから彼は一人でぺちゃくちゃと話し始め…