花嫁と咎人
無意識に低くなる声。
…嫌な予感が、頭の中を駆け巡った。
「取り合えず、直接会ってみたほうが早いと思います。」
そしてアキは俺をゆっくり立たせると…
「静かに、バレたら僕が殺されちゃいますから。」
と言って、牢の鍵を開ける。
―どうやら洞窟の中の様だ。
冷えた空気が肌にしみて、天井からは水滴がいくつも落ちてきている。
点滴の袋を持って前を歩くアキ。
それに続く俺。
一定のリズムを保ち、聞こえる電子音。
「医療器具は殆ど最新の物です。…漂着した時、運よく木の上に乗っかっていたもので…」
やはり、鎖国中のこの国に…こんな音のするものなど一つも無い。
俺は只前だけを見て、彼について行った。
そして暫くして一層明るく光る場所が見えてきた。
アキは、
「あそこにいらっしゃいます。」
と言って足を止める。
「でも、大きな声は絶対に駄目です。症状が症状なだけにとても神経質になっているので。」
そのアキの言葉に、俺は首を傾げた。
「症状が症状なだけにとても神経質になっているって、どういう意味だ?もう大丈夫なんだろ?」
すると彼は小さく息を吐いて俺を見て。
「身体的な問題はもう無いです。でも……」
「……?」