花嫁と咎人
「心の問題は、どうにも出来ません。」
静かにアキはうな垂れた。
そしてアキが指差す方向、電子音がなる場所へ…足を進める俺。
なぜだろう。
こんなにも胸騒ぎがするのは。
嫌な予感しか、しない。
でもフランに会わなければ。
そう思って着いた先。
「――…フラン。」
そこにいたのは、白いベッドに腰掛けるようにして…遠くを見ている彼女の姿があって。
“緋色の死神”による赤い発疹も無く…後は腹部の傷が治るのを待つだけといったようなその佇まいを見る限り、
何処にも異常は無さそうだった。
けれど、徹底的に…彼女は変わってしまっていた。
「フラン。」
もう一度その名を呼んでも反応すらしない。
近づいて、その視線を合わせた時…
俺はどうしていいか、分からなくなった。
―…ガラス玉のように濁ったエメラルドの瞳。
笑う事も、悲しむ事もなく…瞬きすら、しない。
そして彼女の口が開いたとき、まるで地に落とされたような気分になった。
―――――だ、れ、?
声さえも…聞けなくて。
自分が誰かも分かってもらえなくて。
どういうことだ?
嗚呼、分からない。
わからないよ。