花嫁と咎人
◇ ◆ ◇
―エステリア城、正面城門前。
「―ラ、ラザレス様、お待ち下さい…!」
憲兵が必死にラザレスを静止する。
「今、貴方様が城から出てしまわれたら危険でございます!早くお戻りになって下さい!」
しかし今にも馬に乗り込もうとするラザレスを誰も止める事など出来なくて。
「何が危険なのだこの下種が!オーウェンが何処へ向かっているのか、もう分かっているというのに!」
馬を動かしながらラザレスは鬱陶しそうに憲兵を見ると、眉をひそめた。
…そうだ、オーウェンの行く先には女王と死刑囚がいる。
早く女王から王族の証を奪って、栄光をこの手に掴み取りたいのだ…!
嗚呼、何もかもを排除してきた甲斐があった。
否、そうでなければ意味がない。
私こそ―…
王にふさわしいのだから!
自然と零れる笑み。
揺ぎ無い、勝利の確信。
…どうです女王陛下。
さぞ楽しいお遊戯のお時間だった事でしょう。
止まらぬ笑みは人々を硬直させた。
「お前達は早く処刑台の準備でもしておけ。」
黒髪の隙間から光る金色の瞳。
「私が帰ってきたら、すぐに使う事になるからなぁ!」
そして憲兵を振り切り、駆け出した狂気の鬼は、
「…ラザレス様!」
止まる事を知らない。