花嫁と咎人
彼は近くの倒木に腰をかけると、小さく息を吐いた。
「これで、やっと終わるのかと思うと…嬉しくて仕方が無いんだ。」
季節も冬に傾き、白くなる吐息。
「数え切れない程の罪を犯してきて、こんな事を言うのは最も罪深い事だと思う。」
寒さで冷える両手を擦り合わせながら…オーウェンは俯いた。
「それでも、」
そしてその手で顔を覆いながら、
「僕は幸福だと思ってしまうんだ。」
自嘲気味に笑って。
「…本当は、もっと笑顔でいたかった。」
その笑いの中に小さく混じる嗚咽。
弱き長の姿を、フレッドは見つめる事しかできなくて。
「女王も、エルバートも…サミュエルも、本当は慕うべきあの死刑囚も…、全て敵に回すしかなかった。」
偽る事は、彼にとって重みでしかなかった。
父に逆らって…全てを台無しにしてしまうのを恐れる余り、
絶対的な服従を保ってきた。
全ては、この国の為。
本物の…心を取り戻す為。
「恨んでなど無かったのに…、恨まれてしまうのは…仕方が無かった。」
「―…オーウェン様」
「これが、僕の…人生だから。」
彼はその心さえも犠牲にして、全てを終わらせようとした。
「………。」