花嫁と咎人

―…フレッドは知っていた。


あの死刑囚と共に捕らえられた異国人を、開放してやった彼の姿を。


女王と死刑囚の脱走を止められなかった罪で死刑宣告された憲兵二人を、そっと逃がしてやった彼の姿を。


酒場の女店主の尋問で殺した憲兵が…全て大罪を犯し、死刑にされる運命の者であった事を。


もちろん女王専属騎士のエルバートを救い、逃がした事も。


…毒蛇の森で倒れた騎士団はすぐに処置をして…近くの街にこっそり送り返していた事もフレッドは全て知っていた。


無実の罪で死刑宣告をされた者の処刑日の夜には、決まってかぼちゃの料理が大量に出された。

絞首刑の時は、ハムが良く出た。


『…あの断頭刃の切れ味は抜群だ。』


と、そのかぼちゃ料理を頬張りながら彼が言っていたのをよく覚えている。



シュヴァンネンベルク公ラザレスの息子、
オーウェン・イブ・シュヴァンネンベルク。


その名を聞いただけで、怯える者は数知れず。


『あの息子も父と同じく残虐で恐ろしい奴だ。』


『近寄るな、殺される。』


『…あの目。…恐ろしいわ。』


望みもしないその言葉に、彼は孤独を決め込んだ。


親しくなった者と、少しでも心の内を話せば…
次の日その者は何処かへ行き、


それが大人であろうと、子どもであろうと…


父の手によって次々と棺の中に納められてしまう。

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