花嫁と咎人

悲劇の公爵家の跡取り…オーウェン・イブ・シュヴァンネンベルク。


目の前で涙を見せる彼は―…

たった一人で戦った、孤独な戦士であった。


フレッドはそんな彼の手を取り、優しく微笑みかけた。


「オーウェン様、そんな悲しい事を仰らないで下さい。」


「………。」


「まだ、貴方の人生はこれからではありませぬか。」


涙に濡れた金色の瞳が見開かれ、フレッドを見つめる。


「貴方はお父上とは違う。」


フレッドの赤茶の髪が靡いて、


「貴方の人生はもう、貴方のものです。」


交差する視線。


「…それに、昔、この赤髪の差別を無くすと言って下さったではありませんか。」


覚えていますか?と立ち上がるフレッドを見て、オーウェンも涙を拭った。


「忘れたとは言わせませんよ。待ってるんですから。」


そして同じように立ち上がると、


「―…ああ、忘れてたよ。」




不器用にに笑って見せた。



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