花嫁と咎人

「―…!?」


人ごみの後ろの方から、突如銃声が聞こえた。

思わず動きを止めてしまうルエラと、一斉に振り返る人々。
そしてその後すぐに人ごみの中央がぱっくりと割れて…一本の道が出来始めた。


「ギリギリセーフって所かなー。危っねー。」


大きな声で話しながら、その道を歩いてくる一人の人物。

右手には拳銃。
腰には二本の剣をぶら下げて、なんとも古めかしい格好をしている。


しかし、ルエラはその人物を知っていた。
ハインツと仲が良かった男の子。

かなり背は高くなって、声変わりもして…
大人びたせいか、昔の見た目とはかけ離れたところがあるけれど…

あのダークブラウンの髪に、あの口調。


「―…オズ、君…?」


雰囲気が彼だと物語っていた。

背後に物騒で強面の仲間を引き連れて歩いてくる彼は、やがてルエラ達のいる場所へと乗り込んでくると…


「邪魔な奴はどかせろ。」


右手をなぎ払い、部下達に命令した。

するとどうだろう。
処刑の関係者達は勿論、父までも羽交い絞めにされてしまって。

でもそんな中、オズはしゃがみ込むルエラの手を取ると縛られたロープを剣で切り、


「友の命で、貴女を助けに参りました。」


跪いて手の甲にキスを落とす。

それからルエラを立ち上がらせると、彼は、羽交い絞めにされている父と対峙した。


「…っ、一体何をするこの無礼者が…!お前も処刑にするぞ…!」


ぎりぎりと歯を食いしばる父のその姿を見て、途端にオズは笑い始める。



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