花嫁と咎人
「“もし5年以内に母を見つけた、あるいは母の遺品を見つけた時…その時は義父を…国外追放する”。貴方は、かつてこれに同意した。」
「………。」
「そしてオズ君が持ってきたこの母の遺品とハインツの血判付きの証明証。」
ルエラは父を見、父はルエラを見る。
「それが何よりの証拠。」
交差する視線は…以前とは違うものになっていた。
「すなわち、私の処刑は無効。…ハインツに継承権が与えられる事になる。」
全ての民が見守る中、ルエラは一言ずつ丁寧に話し、
「以上の証拠を元に、私の名において…貴方を、」
そして。
「国外追放の刑に処す。」
刹那、一気に歓声が沸きあがった。
「…くそ、私はまだ…!」
そんな中、今だ無駄な抵抗を続ける父。
ルエラは憐れな父を見て…小さく告げた。
「ご退陣下さい、父上。…我々も、国民も…もはや貴方を望んでなどいない。」
「―ル…ルエラ、父を、み、見殺しにするつもりか…!?」
しかし彼は醜いばかりに往生際が悪く、彼女に手を伸ばすが…
「父…?笑わせるな。…私は貴方を父と思ったことなど一度も無い。」
無表情で切り捨てると、彼女は歩いて行ってしまった。