花嫁と咎人
「―…連れて行け。」
オズの命で羽交い絞めにされたまま、連れて行かれる彼。
その憐れな姿を見送り
「――…。」
オズは目を伏せた。
――――…
―――…
――…
「―…それでハインツはまだエスタンシアに…」
オズから話を聞いたルエラは、落ち着きを取り戻した広場のベンチに腰をかけていた。
隣には炭酸飲料を片手に同じように座るオズ。
夕暮れが近くなった広場にはもう、処刑台の姿は見当たらなかった。
「まだ、エスタンシアでの一件は終わっていません。」
「…だろうな。」
「オレはすぐこっちに向かったんで、ハインツ達の安否は分からないんです。」
シュワーと音を立てて、炭酸飲料が二酸化炭素を吐き出す。
「…一刻を争う事態かもしれない。」
その音を聞きながらルエラは小さく息を吐いた。
「ならばこちらも、オチオチ平和ボケしている訳にも行かないな。」
そして彼女は立ち上がると、
「…ありがとう。」
突然、オズに礼を言う。
「君が来てくれなかったら、今頃私の胴体と首はバラバラだった。」
冗談なのか本気なのか分からないが、その笑顔はハインツとそっくりで。