花嫁と咎人

境界を越えて


―…ショック。

そのせいだと、アキは言った。

俺は牢の中で何をする訳でもなく、ただぼんやりと鉄格子を見つめては…
仕方が無く呼吸をした。


一時的なものだと思うから、いつかは治るだろう。


ぐるぐると渦巻くのはアキの言葉。


「いつかって…いつだよ…」


そう自問自答を繰り返しては、負の感情が波のように押し寄せ…
生きる意味すら見出せなくなる。


心が痛かった。


切り刻まれたように粉々になる思い出の破片が、容赦なく突き刺さって。
耐えられなくなるほど…俺の顔は組んだ腕の中に埋まっていく。


…嗚呼、生きる意味が分からない。


孤独は、死すら辛かった。



――フランと会って、俺は何度も問いかけた。


何も分からないのか?

自分の事も?

今までの事も?


…俺の事も?


だがその首が縦に動く事は無く…無論反応も無く。
彼女は本当に人形のように俺を見つめては…


「(―…だ、れ…?)」


と声の出ない唇をそう動かすだけ。


その瞬間、何かが落ちたような気がして、
両手で頭を抱え込んで、

呼吸をするのを忘れた。


―…実はそれからの事を俺は何一つ覚えていない。



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