花嫁と咎人

気がついたら前と同じように牢の中で寝転がっていて、腕に繋がっていたのは点滴の管。


乾燥した瞳、乾いた喉。

そこにアキの姿は無く。


―…もしかして、全部夢…?


だなんて一瞬錯覚を起こしたけれど、悪夢は現実だった。


ひたり、ひたり。


洞窟の奥。
通路の向こう。

白い服を纏った少女が、こちらを見ていて。


「――…。」


俺はその姿をぼんやりと見ていた。

何も言わず、近づかず…只俺を見つめる少女。


それがフランだと気が付くまでに、何分かかかった。


―…でも。

勿論無言のままで彼女は去り、俺も無言のままで顔を伏せた。


見えない壁をどうする事も出来なかった。

いくら俺が彼女を知っていても、彼女は俺の事を知らない。

足掻く事すら虚しく、伸ばす手すら届かないなら。


「いっそ、このまま。」


堕ちてしまうのもいいかもしれない。


深い闇の中。
もう二度と這い上がれないくらいに、深く深く。


誰も救う事のできなかった、運命の敗北者として。


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