花嫁と咎人
◇ ◆ ◇
木々が生い茂る森の中にあった、小さな洞窟。
…海賊のアジトの入り口でオーウェンと副騎士団長フレッドは、海賊の賊頭と会っていた。
周りに蔓延る賊団員。
そんな張り詰めた空気の中、
「それで、女王陛下と死刑囚は何処に?」
オーウェンは淡々と手紙を突き出し、賊頭に問いかけた。
「ああ、中にいるよ。」
その問いにニヤリと笑みを浮かべながら、男は刺青だらけのスキンヘッドをくいっと動かし…オーウェン達に目を向ける。
だが、その口から漏れたのは、
「でも、まだ渡さねぇよ。」
オーウェンの想像とは異なる回答で。
「―…何のつもりだ。」
オーウェンが鋭い眼光で賊頭を睨むと、彼は大口を開けて笑った。
「おれ達の世界にはなぁ、掟っつーモンがある。この世界のモンと干渉するなら、こちとら掟に従ってもらわねぇとな。」
「………。」
暫くの沈黙。
フレッドが心配して見つめる中、オーウェンは小さく息を吐いて、
「…その掟とやらを、聞かせて貰おうか。」
もう一度賊頭を見た。
「貴族様はいいねぇ。物分かりが早い。」
笑う賊頭はそんな彼を嘗め回すように見ると、指を一本立てて口元を歪める。