花嫁と咎人

  ◇ ◆ ◇


ひやり。

何かが頬に触れたような感覚に襲われた。


「…ん、」


なんだよ、まだ眠いのに。

安眠を妨害されまいと、冷たい石畳で寝返りを打って俺はもう一度寝息を立てる。

すると、今度は髪を引っ張られて。


「…止めろよ。」


そうは言ったものの…、ある重要な事に俺は気がついた。


―…誰だ?


「――、!」


その刹那、俺は目を開け己の髪を触る。

変わらない長い髪。
しかし、その先に触れたのは…温かく、柔らかい感触の物。

五本に枝分かれしたそれは、辿ると一つになっていて。


…手。


俺はその腕を掴んだまま…反転させるようにして体を起こした。


「―…、なん、で…」


その手の持ち主。

そう。
そこに居たのは、フラン。

真っ白なドレスに身を包んだ…彼女だった。

短い髪は後ろで束ねられて、豪華な沢山の髪飾りが輝き…
化粧をしたその姿は…まるで姫。




否、それは花嫁のようだった。




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