花嫁と咎人
しかし彼女は俺の居る牢の鉄格子越しに座り込み、ひたすら俺の髪を触って。
せっかくの三つ編みも、全部ほどいてしまうほど。
「―…フラン…?」
もしかして記憶が戻ったのかと、淡い期待を胸に声をかけてみたが…
「………。」
勿論返事も無く、
「…だよな。」
期待を抱いた自分に後悔をする。
しかしそんな彼女は突然、俺の髪をいじるのを止めると、
「――…。」
声の出ない口を開いて何かを俺に言った。
「…え?」
聞こえなかった俺は、首を傾げ…鉄格子一杯に彼女に近づくとその口を見る。
「ごめん、もう一回言ってくれるか。」
そしてそう俺が言うと、フランの口が…もう一度開いた。
「(…と、が、)」
―…とが。
「(び、と。)」
…咎人。
彼女は俺を見て、咎人と言ったのだ。
「(ろうに、いる、から。)」
続いてそう言うと俺の手をきゅっと握りしめて。
「(わるい、こと…したの…?)」
首を傾げる彼女を見て…刹那。
俺は途方もなく泣きたくなった。